絵本の四角の中に広がる空。
空の展覧会。その絵は時間ごとに変化する。同じ絵はひとつとしてない。
数年前に旅行で行った直島の地中美術館の中で、ごろんと大きな石の上に寝転がり、
白い額縁の中に納まる大きな空の絵画を楽しんだことを思い出す。
風が強く吹けば、雲は流れ、形を変える。
夕暮れどきには、青かった絵は、ピンク色、赤色、紫色へと変化していく。
夜になれば、真っ黒な絵の中に星の小さな光が散りばめられる。
夏になればモクモクと膨れ上がる入道雲。
秋になれば、モコモコ羊雲。
雲から差し込む光の筋、天使のはしご。
空は時に海のようだし、地図のように大きな大陸のようだし、
形を変え、色を変え、つかみどころのない姿は、
私たちを飽きさせることなく、いつまでも魅了する。
空を見上げて、歩いてみよう。
《著者紹介》
1949年札幌市生まれ。東京芸術大学デザイン科卒業。
絵本の制作、本のさし絵や装丁のかたわら、タブロー制作、童話やエッセイの執筆と幅広く活躍中。主な著作に、童話『マキちゃんのえにっき』(野間児童文芸新人賞受賞)、絵本『むぎわらぼうし』(絵本にっぽん賞受賞)、『よだかの星』(以上講談社)、『水仙月の四日』(産経児童出版文化賞美術賞受賞・偕成社)、エッセイ『カザルスへの旅』『グレイがかまってるから』『空のひきだし』(以上理論社)など。
絵本の近刊に、『1000の風 1000のチェロ』(偕成社)、『はくちょう』(講談社)などがある。
※絵本より引用