グリム童話は怖いお話が多く、おどろおどろしいので、
名作が多いものの、なかなか子どもと読むのに躊躇してしまうところがありますが、
いもとようこさんの描くでグリムの世界は、
ちゃんと物語(フィクション)として小さな子どもも楽しめるところが素晴らしいです。
こやぎのお母さんが出かけ、7ひきのこやぎはおうちでお留守番することに。
お母さんにオオカミが来ても絶対に扉を開けないように子ども達に言います。
オオカミはガラガラ声で、手が黒いからねとオオカミの特徴を伝えました。
しばらくすると、ドアをトントンと叩く音がします。
おきゃくさん?でももしかしたらオオカミかもしれないので、
すぐに扉は開けちゃだめだと子どもたちは身を寄せ合い警戒します。
だれ?と聞くと、お母さんよと答えますが、その声はガラガラ声。
きっとオオカミです。
すると今度はオオカミは声色を変え訪れました。
声は美しくなったけど、手を確認しなくちゃと子ヤギたちは、
しっかりお母さんに言われたことを守ります。
手を見せて!と言うと、窓から黒い手が見えました。
オオカミだ!お母さんの手は白いものと伝えました。
しばらくするとまた扉を叩く音と、白い手が見えました。
今度こそお母さんだ!と扉を開けると、手だけを白いおしろいでぬったオオカミが現れ、
7匹の子ヤギたちに次々と襲いかかり、丸のみしていきます。
お母さんがおでかけから帰ってくると、家の中は荒れはて、
かわいい子どもたいが一匹残らず姿を消していました。
お母さんの前に末っ子の子ヤギが時計台の中から一匹出て来ました。
みんなオオカミに食べられちゃったと泣きます。
お母さんはオオカミを探しにいくと、野原で気持ちよさそうに昼寝をしているオオカミの
お腹をハサミで切ると、こやぎの兄弟を助け出し、石をたくさん詰めて、
お腹を縫いました。昼寝から起きたオオカミは水を飲みに井戸に向かい、
お腹の重さにバランスを崩し井戸の中へ。
赤ずきんちゃんといい、オオカミはいつも悪役ですね。
オオカミもお腹をハサミで切られても、起きない、気づかないのが不思議。
いもとようこさんの絵は終始可愛らしいですが、
オオカミが遅いかかるシーンは迫力があり、怖いシーンとしてしっかりと描かれています。
グリムのちょっと怖い世界が、可愛らしい物語の世界として楽しめる絵本です。
《著者紹介》
原作:グリム
ドイツの言語学者であるヤーコブ(Jacob)ヴィルヘルム(Wilhlm)の兄弟。
古代の言語研究の一環として集めた伝承昔話に、主に弟・ヴィルヘルムが加筆し、
子どもの読物として多くの作品を残した。代表作に『ヘンゼルとグレーテル』
『赤ずきん』『いばら姫』『白雪姫』『灰かぶり(シンデレラ)』などがある。
文絵:いもとようこ
兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学油絵科卒業。『ねこのえほん』『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童書展エルバ賞を2年連続受賞。『いもとようこ うたの絵本1』で同グラフィック賞受賞。
作品に『おおきな おおきな木』『くまのこうちょうせんせい』『あいうえおのえほん』『くまのこうちょうせんせい』『あいうえおのほん』『ABCのえほん』『もしもしおかあさん』、『こねこちゃんえほん』シリーズ、『ないた赤おに』『ごんぎつね』など日本の名作を収録した「大人になっても忘れたくない いもとようこ名作絵本」シリーズ(すべて金の星社)など多数。
※絵本より引用