2005年にコールデコット賞オナー賞を受賞した作品です。
時代背景は第二次世界大戦か、戦時中のお話。
アフリカ系アメリカ人の男性たちは、皆兵隊として出征していて、
エイダ・ルースの母は、出稼ぎにシカゴへ一人旅立とうとしている。
母が旅行鞄によそ行きのワンピースなどを詰め荷造りする中、
少女は涙が出そうになるのを必死でこらえる。
母は雨よりも、雪よりもあなたのことが大好きよと、今まで何100回とやりとりし、
大好きな背中を送る。
祖母と二人だけで迎える冬がやってきた。
小さな野良猫がやってきて、うちには猫を飼う余裕などないけれど、
祖母はミルクを猫に差し出した。
母へ何度も手紙を書くも、返事はいくら待っても来ない。
お金も送られてこない。猫のふわふわとした毛並みと、あたたかさで、
母のぬくもりを思い出し、また涙がこみあげてくる。
こぼれてしまわないように、瞬きしながら。
寒い冬の日、祖母と外に出て、ウサギを仕留めに行く。
もし仕留められれば今夜のシチューのお肉になる。
エイダ・ルースは捕まって欲しいとも思うし、捕まらないで欲しいとも思う。
何日も何日も母の帰りを待ち、そんなある日一通の手紙が届く。
お母さんからの。ストーブの前でシチューがふつふつと美味しい音を立て、
猫は暖炉の前で大人しくしている。
エイダ・ルース祖母とその手紙を何度も繰り返し読む。
母がもうすぐ帰って来る。
すべての構図が正面から描かれておらず、斜めからや上からのアングルや、横からの
アングルになっている。
その構図がそっと二人の寂しさを覗いているようで、よけいにリアルで、
心もとない。
届きそうで届かない、通えそうで通えない心のように。
冷たい冬、心も凍り付きそうな不安、さみしさ、そして猫や、シチューの
温もりが対比となって、どうしようもない切なさが胸をしめつける絵本です。
小学生から大人に向けた絵本です(*^-^*)
《著者紹介》
文:ジャクリーン・ウッドソン
1963年、アメリカ、オハイオ州に生まれる。児童文学作家。2001年、『ミラクルズボーイズ』(理論社)でコレッタ・スコット・キング賞を受賞。おもな作品に、『レーナ』(理論社)、『あなたはそっとやってくる』(あすなろ書房)がある。現在、ブルックリン在住。
絵:E.B.ルイス
1956年、あまりか、ペンシルヴァニア州に生まれる。幼少期に芸術家である二人のおじから影響を受け、画家を志す。深みと美しさを兼ねそなえた写実的な画風で、数々の賞を受賞しており、これまでに手がけた児童書は30を超える。
訳:さくまゆみこ
東京都に生まれる。編集者、翻訳家。著書に『イギリス7つのファンタジーをめぐる旅』(メディアファクトリー)など、訳書に『ローザ』『リンカーンとダダラス』(光村教育図書)、『シャーロットのおくりもの』(あすなろ書房)、『オオカミ族の少年』(評論社)など多数。
※絵本より引用
【文:ジャクリーン・ウッドソン 絵:E.B.ルイス 訳:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書】