人間にも妊娠2か月までは尾骨というしっぽがあるそうです。
それが成長とともに進化をたどって子どもの形になっていくよう。
生まれたときには、もうそのしっぽの姿は見当たりません。
この絵本は動物のしっぽのそれぞれの働きを紹介してくれるユニークな絵本です。
しっぽは飾りのような、付属のような気がしていましたが、
ちゃんと大切な役割をそれぞれに担っているようです。
くもざるのしっぽは、果物をもぎとったり、枝から枝へ移動したり、
もうひとつの手のような役割を果たしています。
にほんざるのしっぽは、とても短い。その短いしっぽをピンと立てている時は、群れの中で
自分が一番強いんだぞというしるしで、弱いサルはみんなしっぽを下げています。
身近なイヌやネコはしっぽで感情を表現し伝えます。
犬は怖いときには、しっぽをうしろあしの間に隠したり、
うれしいときには、しっぽを左右にいそがしく振っています。
カンガルーのしっぽは、第3の足のように、地面から体を支えバランスを保っています。
きつねの太いしっぽは獲物を捕らえる時などに、走る方向を急に変える際に、
しっぽは舵取りの役目をします。
がらがらへびのしっぽは、しっぽをふってじじじじと音を鳴らし相手に伝えます。
その音を聞いて他の動物は身の危険を察知し逃げるのです。
とかげは自分のしっぽを切って、逃げて命を守ります。
それぞれの動物のしっぽにはそれぞれの役割があって、
いずれも生きていくための大切な体の一部。
しっぽにフォーカスして見えてくる世界は、人間にはないだけに、
興味深く、楽しみながら、新しい発見の連続です(*^^)v
《著者紹介》
文:川田 健(かわたけん)
1937年、宮崎市生まれ。宮崎大学卒業。東京動物園協会勤務の後、1969年渡米。
トベカ動物園飼育係をかわきりに、全米各地の動物園をまわり、現在デトロイト市ベル島動物園勤務。著書に「アメリカの動物園で暮らしています」(どうぶつ社)、「日本人のしっぽ」(近代文芸社)など。
絵:薮内正幸(やぶうちまさゆき)
1940年、大阪生まれ。年少の頃から動物に親しみ、動物のイラストレーターとして図鑑、百科事典、絵本、童話などを幅広く手がけた。2000年、没。主な仕事に「冒険者たち」(岩波書店)、「野や山にすむ動物たち」「海にすむ動物たち」(岩崎書店)、「野鳥の図鑑」「どうぶつのおやこ」(福音館書店)がある。
監修:今泉吉典(いまいずみよしのり)
1914年、仙台市生まれ。国立科学博物館動物研究部長を経て、日本哺乳動物学会会長、動物保護審議会会長を歴任。理学博士。著書には「こども動物大百科」(平凡社)、「森からでてきた人類の祖先」(教育社)など多数ある。
※絵本より引用
【文:川田健 絵:薮内正幸 監修:今泉吉典 出版社:福音館書店】