うさぎのルウェリンはいろいろなものをビンにいれて集めます。
あとでビンの中をのぞくと、きれいだった景色や、楽しかった思い出、
時間に包まれます。
ビンで集めたものは、きんぼうげの花や、鳥の羽、ハート形をした石、
ある日の夕やけ色にそまったさくらんぼシロップのような海。
エブリンといううさぎの女の子も、またその美しい夕日を眺めていました。
ルウェリンは、さくらんぼシロップ色に染まった海をビンに詰めると、
そっとエブリンに渡しました。
エブリンはお家にかえったあと、ビンを見つめると、夕焼け色に染まった海が
夜になってもずっと部屋の中で輝き続けていました。
それから二人は色々なものを一緒にビンに集めました。
雨上がりの虹、波の音、冬の入口のひんやり湿った風。
どれも本当はビンにはいるはずがないものばかり。
それからも二人は季節が巡るごとにたくさんの楽しみをビンに詰め込みました。
ところが、エブリンが遠い街へ引っ越すことになり、二人はお別れすることに。
ルウェリンの心は空っぽのビンになりました。
ある時すごく美しい夜空を見つけて、ルウェリンはエブリンにこの星空を
見せたいと思い、必死で振って来る流れ星をビンに詰めました。
そのビンをエブリンに贈ると、エブリンが遠く離れた街で、
ビンを開けると、たちまちルウェリンが観た星空が部屋いっぱいに広がりました。
エブリンもまた今自分が暮らしている街の夜景や、賑やかな音をビンに詰め
ルウェリンに贈りましたというお話。
忘れておきたくない”今”をずっと詰めていられる不思議なビン。
美しい景色の移ろい、風、匂い、今にも消えてしまいそうな虹。2人の思い出。
目には見えないもの、触れられないものも、形にならないもの、全部とっておけたら・・・
美しく夢のような世界観にうっとりとしてしまう。
大人も子どもの、憧れや願望をいっぱい詰めた作品です。
【作:デボラ・マルセロ 訳:なかがわちひろ 出版社:光村教育図書】