かしの木が、どんぐりから大木へ成長する中で、
動物や人々と過ごすながい月日が描かれた絵本。
最初はとても小さな芽だった。2年が過ぎたころ、ハリネズミほどの背丈に成長し、
かしの木は地面にしっかり根を下ろし、枝を伸ばしながら、ゆっくりと大きくなっていった。
何百年もすると、枝を左右に大きく広げ、かしの木の下で、
たくさんの動物がどんぐりを食べにやってきたり、木陰で休みに来たり、
かしの根元にキツネが、巣をつくり、厳しい冬を過ごした。
またながいときが過ぎ、いつの間にかキツネがいたところには、アナグマが
さらに深い穴を掘り住んだ。
やがて人間がかしの木の側に道をつくり、
かしの木の周りにあった木は切り倒され、大きな軍艦になったり、お宿をつくったり、
かしの木の側に家が立ち並び、子どもたちは大きな枝にブランコをつくり、あそび、
幹に恋人たちが名前をほり、いつの間にか村が出来ていました。
そんなある夏、雷がかしの木に落ち、大木は燃えてしまいました。
次の日市のお役人が、かしの木を根本が切り倒しました。
年輪を数えると1000 年を超えていました。
人々ともに生きてきたかしの木。かしの木の成長とともに、
動物や人々の思い出が刻まれていき、かしの木はなくなってしまいましたが、
人々の心の中にはいつもかしの木の周りで過ごした、たくさんの思い出が、
幹となり、葉っぱとなり、実となり、いつまでも心とともにあるのでした。
木の長い一生を描いていますが、それは私たちの100 余りの一生と同じです。
いいときも、そうでないときも、私たちは懸命に毎日を生きている。
いつしか終わりが来るその日まで。
《著者紹介》
文・絵:エリザベス&ジェラルド・ローズ
ジェラルド1935年、香港生まれ。イギリスに渡り、油絵を学ぶ。小学校の教師をしていたエリザベスと知り合ってから子どもの本に興味をもつようになり、コンビで数多くの絵本を手がける。『ウィンクルさんとかもめ』(岩波書店)、ジェラルドの『なんじゃこりゃたまご』、挿し絵に『猫と悪魔』がある。
訳:ふしみみさを(伏見 操)
1970年、埼玉県生まれ。フランス語・英語の絵本の翻訳を中心に活躍。訳書に『ビュンビュンきしゃをぬく』『なつのゆきだるま』『ウィンクルさんとかもめ』(岩波書店)、『バスの女運転手』(くもん出版)、『しらないひと』(講談社)、『どうぶつにふくをきさせてはいけません』(朔北社)、『あかがいちばん』(ほるぷ出版)、
『マルラゲットとオオカミ』『はなくそ』(パロル舎)、『うんちっち』(PHP研究所)などがある。
※絵本より引用
【文:エリザベス・ローズ 絵:ジェラルド・ローズ 訳:ふしみみさを
出版社:岩波書店】