ユリ・シュルヴィッツの絵本が好きなのですが、代表作の『よあけ』といい、
哲学的で、短い言葉の中に、人生にとって大事なこととは?
という問いかけをされているような気がします。
ユリ・シュルビッツの『たからもの』には、たからものが3つ出てくると私は思います。
まずしいアイザックという男が3回も同じ夢をみます。
夢の中で『都へゆき、宮殿の橋の下で、たからものをさがしなさい』というお告げがあ
り、
そのお告げを信じ、はるばる宮殿まで旅をすることに。
何日も歩き続け、ようやく宮殿につきます。
宮殿の橋に行くと、何人もの衛兵が昼も夜も警固にあたっていた。
アイザックはたからものをしいて、探そうとはしなかった。
毎朝橋にいき、日が暮れるまであたりを歩き回った。
あるひ衛兵の隊長が、アイザックにこえをかけた。
『なせ いつも ここにいる?』
アイザックは夢の話をすると、
『夢をまにうけるなんてなんてやつだ』と笑われ、
『いいか、わたしもいつだったか夢を見た。あの夢を信じるなら、おまえさんの町へ行って、アイザックというおとこのいえのかまどのしたでたからものをさがすだろうな』
そういうと、隊長はもういちど わらった。
アイザックは隊長におじぎをして、またはるばる来た道を戻り始めた。
何日もかけてようやく家に戻ると、かまどのしたをほった。
たからものがでてきて、
感謝の気持ちから《いのりのいえ》をたてた。
そしてかべのかたすみに、こう刻み付けた。
『ちかくにあるものをみつけるために、とおくまで旅をしなかればならないこともある。』と。
隊長にはすばらしいルビーを贈り、アイザックは一生こころやすらかに暮らした。
というお話です。
私はここで目に見えるものと、目に見えないものの、3つのたからものを手に入れたのだなぁと思いました。
★たからもの
★隊長との出会い
★『ちかくにあるものをみつけるために、とおくまで旅をしなかればならないこともある。』という経験、哲学。
子どもには少し理解するまで難しいかもしれませんが、大人にも読んでもらいたい、
子どもに、伝えたい大事なことを教えてくれる絵本です!
《著者紹介》
作者:ユリ・シュルヴィッツ
1935年、ポーランドのワルシャワに生まれる。4歳で第二次世界大戦をむかえ、
家族でポーランドを脱出、各地を転々とする。1949年イスラエルにおちつき、
働きながら夜間高校に通った後、教員養成機関で文字などを学ぶ。その一方で、
子どもの頃から才能を発揮してきた絵の勉強も続けた。1959年単身アメリカへ渡り、
2年間絵画学校に学ぶ。1963年に初めて自作絵本『ぼくとくまさん』(あすなろ書房)
を出版。以後長年にわたり絵本作家として活躍し、多くの作品を手がけてきた。
1969年にはアーサー・ランサムの文に絵をつけた『空とぶ船と世界一のばか』(岩波文庫)でコルデコット賞を受賞。作絵ともに自作の絵本に『よあけ』(福音館書店)、
『ゆき』(あすなろ書房)、『あるげつようのあさ』(徳間書店)などがある。
現在、ニューヨーク在住。
訳者:安藤紀子
東京に生まれる。津田塾大学英文科卒業。英語圏の児童文学の翻訳・紹介につとめている。訳書に『桜草をのせた汽車』(めぷん児童図書出版)、『やねのうかれねずみたち』『とびたて!竜の子ダンド』『ペニーの日記。読んじゃだめ』『悪魔の校長』
シリーズ(以上、偕成社)など多数。
※絵本より引用
【作・絵:ユリ・シュルヴィッツ 訳:安藤紀子 出版社:偕成社】