冬の朝、カナダに住む6歳の少女はスクールバスに乗るため、長い道のりを、
雪をかき分けながら、まだ陽が出ない真っ暗な道を、白い息を吐きながら、
一人で進む。
何度となく、その暗闇に、孤独になりながら、その不安を吹き飛ばしながら道を進んでいく。
春は、卒業、入学、入社、退職、新しい生活へ向かう人が多い季節。
期待と同じぐらい、時にはそれよりも大きな不安を胸に抱えながら、
私たちは新しい日を迎えようとしている。
人生の節目で、応援してくれるような一冊です。
冬の朝はまだ暗い。あたたかな家を一歩でると、冷たい風が吹きつける。
スクールバスまでの長い道のりを女の子は、息を切らせながら、
心細さを押し隠して、前へ一歩一歩、歩いていく。
お弁当の入ったかばんをぎゅっと握りしめて、
坂をくぐると、もう家は見えない。
真っ暗闇の森を進むと、いろんな声が聞こえてくる。
誰かに見られているようで、足がすくむ。
勇気を出して、立ち止まらず、見上げないで、ただひたすら前へ進む。
キーキー、ウーウー、ホーホー不思議な音があちらこちらから聞こえてくる。
ひとつ深呼吸をして、そうだ、歌を歌おうと、
女の子は不安を打ち消すかのように、大きな声で歌い出す、
白い息を吐きながら、すると辺りが明るくなった。
北風が吹き荒れ、どこまでも続く雪。
歌って、歌って、歌い続ける。
ずんずんと雪の中を進んでいくと、ようやくスクールバスが見えてきました。
もう大丈夫。そこにはいつものみんなの笑顔が待っていました。
さぁ新しい今日のはじまりです。
カナダが舞台なので、日本とはくらべものにならないぐらい、大地は広く、
どこまでも終わりのない雪景色は、この道で方向はあっているのか不安になる。
真っ暗な中で聞こえる動物の声も、昼間とは違い、不気味な声にかわり、
冷たい北風が余計に弱気にさせる。
自分の歌声で静寂をやぶり、気持ちが少しずつ解けていく。
人生で何度もこういった状況が繰り返される中、
誰かがいつもそばにいて助けてくれたらいいけれど、
そう、うまくもいかないもの。
たった一人の時も、自分を自分で励まし、強い気持ちと、
どんな困難にも負けず、ただひたすら前に進む、前に進んでいたら、いつの間にか、
困難な状況は通り過ぎていたという経験の繰り返しに思う。
そんな気持ちを忘れないでねというメッセージが込められている一冊。
《著者紹介》
文:カロライン・ウッドワード
作家・灯台守。
カナダ、ブリディッシュ・コロンビア州、ピース・リバー流域のセシル湖畔で少女時代を過ごす。その地域の子供たちは、勇敢でたくましく、彼女自身も家からスクールバスの停留所までの長くて困難な坂道をあるいて通った。現在バンクーバー島西部トフィーノ近郊、クレイオクォット湾の入口に位置するレナード島灯台に住む。
絵:ジュリー・モースタッド
カナダで注目されているイラストレーター。
ギャラリーで作品展を開き、アニメーション・ミュージックビデオの制作も手掛ける。
主な作品に『サディがいるよ』(福音館書店)、『スワン アンナ・パブロワのゆめ』『きょうがはじまる』(以上、BL出版)『はるなつあきふゆの詩』(偕成社)『ショッキングピンク・ショック!』(フレーベル館)などがある。スケッチを描いたり、スープ入れを制作したり、パンを焼いたりするのが好き。家族と共にカナダ・バンクーバー在住。
※絵本より引用
【作:カロライン・ウッドワード 絵:ジュリー・モースタッド 訳:むらおかみえ
出版社:福音館書店】