私の住むところには、どこを探し歩いても、こんな夜はないけれど、
本を読んでいるうちに、だんだんと研ぎ澄まされていく感覚と、
ひんやりとした夜の空気、夜の独特な匂い、静かな夜の気配を、
一緒に感じながら、すっかり夜の世界に引き込まれました。
ある日の夜、お母さんが、子どもたちの部屋にやってきて、
『やくそくおぼえている?』と。
子どもたちは、まだ眠い目をこすりながら、無言で支度をはじめ、心ときめかせる。
夏の夜中に、家族みんなで出かける。
家の外の庭では、コオロギが鳴く。町は静まりかえり、真っ暗でひっそりとしている。
大きなホテルは夜中もずっと起きたまま。
町のはずれの家は、ぼんやりと片目を開けている。
どんどん歩いていくと、山のふもとに着く。
よくよく目をこらすと、ウシがこちらをそっと伺っている。
森の中に足を踏み入れる。落ちている枝を踏み、
乾いたパキッとした音が響く。いろんな動物の声も聞こえてくる。
シダが夜風に揺れる。みずうみにはぼんやりと、月が浮かび、
空と湖、月が2つになったみたいに、辺りはずいぶんと明るい。
空き地で家族4人寝転がれば、満点の星空が広がる。
星に手が届きそう、夜空に今にも吸い込まれてしまいそう。
星の数に圧倒される。
山の頂上をめざして、さらに歩を進めると、
もうすぐだ・・・・
ついに・・・夜明けだ。
家族みんなあまりの美しさに言葉が出ない。
いま新しい一日が、始まろうとしている。
夜はみんなが寝ているから、知らない景色を自分たちだけが知っているようで、
特別な気持ちになる。
夜ってこんなに美しいのか、こんなにも豊かなのかと
読んでいて感動します。
ほとんどのページが藍色の夜一色で描かれていて、
家族の足元を照らすライトの光の筋がひとつあるだけの絵本。
真っ暗に感じる夜に、大きな月灯りや、満点の星空は、
まばゆいほどのあこがれを感じます。
子どもたちのわくわくした気持ちや、大人の息をのむほど、圧倒されている夜の世界を、
疑似体験したような気持ちになります(*^-^*)
《著者紹介》
作:マリー・ドルレアン
フランスのストラスブールで装飾芸術を学ぶ。その後、作家・イラストレーターとして、児童書に携わる。2019年に、本作”NOUS AVONS RENDEZ-VOUS"でフランスの名高い文学賞、ランデルノー賞(子どもの本部門)を受賞し、フランスの児童文学賞、ソルシエール賞のショートリストにも選出された。
絵:よしいかずみ
青山学院大学文学部英米文学科卒業。やまねこ翻訳クラブ会員。絵本の翻訳に『おばけやしきなんてこわくない』(国土社)、『神々と英雄』『ころころコアラちゃん』(大日本絵画)、『ぼくのおじいちゃん』『クララ』『介助犬レスキューとジェシカ』『カールはなにをしているの?』(BL出版)など多数。東京都在住。
※絵本より引用
【作:マリー・ドルレアン 訳:よしいかずみ 出版社:BL出版】