★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

夜をあるく

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私の住むところには、どこを探し歩いても、こんな夜はないけれど、

 

本を読んでいるうちに、だんだんと研ぎ澄まされていく感覚と、

 

ひんやりとした夜の空気、夜の独特な匂い、静かな夜の気配を、

 

一緒に感じながら、すっかり夜の世界に引き込まれました。

 

ある日の夜、お母さんが、子どもたちの部屋にやってきて、

 

『やくそくおぼえている?』と。

 

子どもたちは、まだ眠い目をこすりながら、無言で支度をはじめ、心ときめかせる。

 

夏の夜中に、家族みんなで出かける。

 

家の外の庭では、コオロギが鳴く。町は静まりかえり、真っ暗でひっそりとしている。

 

大きなホテルは夜中もずっと起きたまま。

 

町のはずれの家は、ぼんやりと片目を開けている。

 

どんどん歩いていくと、山のふもとに着く。

 

よくよく目をこらすと、ウシがこちらをそっと伺っている。

 

森の中に足を踏み入れる。落ちている枝を踏み、

 

乾いたパキッとした音が響く。いろんな動物の声も聞こえてくる。

 

シダが夜風に揺れる。みずうみにはぼんやりと、月が浮かび、

 

空と湖、月が2つになったみたいに、辺りはずいぶんと明るい。

 

空き地で家族4人寝転がれば、満点の星空が広がる。

 

星に手が届きそう、夜空に今にも吸い込まれてしまいそう。

 

星の数に圧倒される。

 

山の頂上をめざして、さらに歩を進めると、

 

もうすぐだ・・・・

 

ついに・・・夜明けだ。

 

家族みんなあまりの美しさに言葉が出ない。

 

いま新しい一日が、始まろうとしている。

 

夜はみんなが寝ているから、知らない景色を自分たちだけが知っているようで、

 

特別な気持ちになる。

 

夜ってこんなに美しいのか、こんなにも豊かなのかと

 

読んでいて感動します。

 

ほとんどのページが藍色の夜一色で描かれていて、

 

家族の足元を照らすライトの光の筋がひとつあるだけの絵本。

 

真っ暗に感じる夜に、大きな月灯りや、満点の星空は、

 

まばゆいほどのあこがれを感じます。

 

子どもたちのわくわくした気持ちや、大人の息をのむほど、圧倒されている夜の世界を、

 

疑似体験したような気持ちになります(*^-^*)

 

《著者紹介》

作:マリー・ドルレアン

フランスのストラスブールで装飾芸術を学ぶ。その後、作家・イラストレーターとして、児童書に携わる。2019年に、本作”NOUS AVONS RENDEZ-VOUS"でフランスの名高い文学賞、ランデルノー賞(子どもの本部門)を受賞し、フランスの児童文学賞、ソルシエール賞のショートリストにも選出された。

 

絵:よしいかずみ

青山学院大学文学部英米文学科卒業。やまねこ翻訳クラブ会員。絵本の翻訳に『おばけやしきなんてこわくない』(国土社)、『神々と英雄』『ころころコアラちゃん』(大日本絵画)、『ぼくのおじいちゃん』『クララ』『介助犬レスキューとジェシカ』『カールはなにをしているの?』(BL出版)など多数。東京都在住。

 

※絵本より引用

【作:マリー・ドルレアン 訳:よしいかずみ 出版社:BL出版

 


夜をあるく