まだ慣れない学校に通い始めた。
おうちにいるときのぼくは、こどもでいられる。
ぼくはぼくでいられる。
学校に行けば、大勢の生徒の中のひとり。
学校はおうちでもなければ、先生はママじゃない。
でも学校の上にはいつも空があって、雲が浮いている。
そして風が吹く。
学校にも大きな庭があるし、花がさき、蝶が飛ぶ。
図書館に行けば沢山の本があって、
学校にいきたくない日もあるし、行きたい日もある。
良い日もあれば、最悪な日もある。
仲がいい友達もいれば、嫌いな友達もいる。
でも嫌いな友達のことが好きになることもあるし、
ケンカして仲良くなることもある。
色んな事を感じて、色んな事を考えて、その中で楽しみを見つけたり、
時にはキラキラと輝いたり。
そして、みんな旅たちの日を迎える。
色んな事があった学校も、いつか卒業する日がくる。
谷川俊太郎さんの言葉で、男の子の心の動きを感じながら、
はたこうしろうさんの絵が、また言葉以上に語ってくれる。
嫌いな友達が、自分が好きなサメを好きだと気が付いた男の子は、
嫌いな友達に親近感を覚え、仲直りするきっかけになったり。
日々良いことも、悪いことも起きる中で、楽しみを見つけていく男の子が描かれている。
言葉を読み、絵を読み、男の子の6年間の成長を自分の過去と重ねながら。
子どもにとっては、同じ目線で、大好きなママにも言えない事、
毎日頑張っていること、友達に話せない事、成長の過程での心の葛藤に
そっと寄り添ってエールを送ってくれる絵本なのではないだろうか。
私たちはいろんな経験をして大人に一歩ずつ近づいていく。
大人の世界の縮図のような場所が、学校。
何度もこけても、立ち上がって、いつも自分の近くにある、
キラキラしたもの、好きなもの、楽しみを見つけながら、歩んでいって欲しいなぁと
応援しながら読み聞かせしました。
《著者紹介》
文:谷川俊太郎
1931年東京都に生まれる。詩人。21歳で処女詩集『二十億光年の孤独』を刊行。
以後、詩集、絵本、翻訳、作詞など幅広く作品を発表。「月火水木金土日の歌」で
日本レコード大賞作詞賞、「日々の地図」で読売文学賞、『世間知ラズ』で荻原朔太郎など受賞多数。2019年に国際交流基金賞を受賞。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『へいわとせんそう』(ブロンズ新社)など。写真とことばの本に『あさ/朝』『きらきら』『すき好きノート』(アリス館)など、多数の作品がある。
絵:はたこうしろう
1963年兵庫県に生まれる。絵本作家、イラストレーター。絵本に『ショコラちゃん』シリーズ(講談社)、『ゆらゆらばしのうえで』『ことりのゆうびんやさん』(以上福音館書店)、『なつのいちにち』(偕成社)、『むしとりにいこうよ』『みちくさしようよ』(ほるぷ出版)、『雪のかえりみち』(岩崎書店)、『はるにあえたよ』「クーとマーのおぼえるえほん」シリーズ(ポプラ社)、『ぼくはうちゅうじん』「おとうさんもういっかい」シリーズ「えほん図鑑へんてこ!」シリーズ(アリス館)、『どしゃぶり』(講談社)、『こんにちは!わたしのえ』(ほるぷ出版)など。
※絵本より引用
【文:谷川俊太郎 絵:はたこうしろう 出版社:アリス館】