ワルターは貧乏でしたが、リンゴの木を一本持っていました。
でもそのリンゴの木は、一度も花をつけることもなければ、実をつけたこともありません。
いつも隣の庭にたわわになるリンゴを羨ましく眺めていました。
ある夜ベッドの中でワルターは、
「ひとつでいいから、うちのきにも リンゴが なりますように。
そんなに りっぱな みでなくても いいのです。
ひとつで いいから ほしいのです」
と願うとその願いはすぐに叶えられました。
春に白いりんごの花がひとつ咲き、ワルターはうれしくて木の周りを飛び跳ねました。
その小さな白い花を守るために、昼も夜も花のばんをして、
強い風が吹く時には手をかざし、守りました。
夏になると実がなり、秋になると実は色づき、収穫の時を迎えましたが、
ワルターさんはあと1日、あと1日と収穫せずに大事にしていると、
りんごはみるみる大きくなり、ワルターよりも大きな実になりました。
ようやく収穫すると、市場に背負っていきましたが、
市場の人にも買ってもらえませんでした。
行き場をなくしたりんごを見て、悲しくなりました。
おばけリンゴは誰にも買ってもらえませんでしたが、
思いがけないことで国に役に立つことになりました。
ワルターは今度はバスケットに入るぐらいの小さなりんごをふたつ欲しいですと、
願うのでした。
絵本の世界らしいお話で、リンゴが想像をはるかに超えて大きくなっていくところは、
ドキドキとするし、その後まさか王様やリュウなどが登場するなんて、
話の展開も大きく変わり、外国の絵本らしいストーリーが展開されます。
欲をだして、大事にしすぎても、食べ頃ちょうどいい頃合いを逃してしまうねと
子どもと話しました。
何事もそこそこが一番(*^-^*)
こんなにリンゴに愛着を持って、大事に大事にするワルターさんが、
実は最後リンゴが嫌いなんだという告白も面白かったです。
《著者紹介》
作:ヤーノシュ
1931年、ポーランドに生まれた。7年間鍛冶屋の工場で働いたのち、仕事をさがしてドイツに移り、ミュンヘン芸術学院にしばらくいたこともある。ほとんど独学で、インダストリアル・デザインの仕事にたずさわり、その後絵本作家・画家として作品を発表、もっぱら都会を離れたいなかの海岸町などで仕事をしている。「おばけリンゴ」は7カ国語で発行されており、国際的な成功をおさめた。ほかに、「フィリッポとふしぎな筆」「ヨーザと魔法のバイオリン」などの作品がある。
※絵本より引用
【作:ヤーノシュ 出版社:福音館書店】