作者の荒井良二さんが、大学生の時に絵本作家の道へ進むきっかけとなった
長新太さんの『ちへいせんのみえるところ』という作品からインスパイアされて
完成した作品。
”こどもたちはまっている”というフレーズが繰り返される。
こどもたちが待っているのは、
窓から眺める景色、船が通るのを待っている。
ロバが通るのを待っている。貨物列車が通るのを待っている。
雨上がりを待っている。夏を待っている。雪が降ってくるのを待っている。
お祝いの日を待っている。ゆうやけを待っている。月が出るのを待っている。
朝が来るのを待っている。
子どもの頃は無限にあった時間。
子どもたちはいつも何かをワクワクしながら待っている。
地平線は見えているのに、それはとても遠いのかもしれない。
何かを分け隔てる線ではなく、
大人と子どもの感性をつなぐ一本の線のように、
もう戻れないあの頃と、これからの未来を繋ぐ一本の線のように、
まばゆい程の色彩と光とともに、導かれる。
大人になった今は、待っている余裕はなくなり、いつも時間を追いかけているようだ。
忙しい毎日、過ぎていく時間と子どもの成長を追いかけながら、
昔私たちも、たくさんのワクワクを、無限の未来に想像ふくらませ、
新しい明日を待ちわびていた。
子どもだった頃のかけがえのない時間が蘇ってくる一冊。
胸がつまるのような温かさが満ちていく。
《著者紹介》
作:荒井良二
1956年山形県生まれ。『たいようオルガン』でBBY賞を、『あさになったので、まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を、『ルフランルフラン』で日本絵本賞を、
『きょうはそらにまるいつき』で日本絵本賞を受賞するほか、2005年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど国内外で高い評価を得る。またNHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当、2018年まで
「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」芸術監督を務めるなど、その活動の幅を広げている。
※絵本より引用
こどもたちは まっている (亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉3)