もうすぐ小学生になる子どもと一緒に読みたい絵本。
くまのくんちゃんが、はじめてがっこうに通う1日の話です。
ワクワク、ドキドキしながら、くんちゃんはお母さんと一緒に小学校へ向かいます。
途中、森の中でたくさん動物に出会うたび、今日から小学校なんだ~と
すこし自慢げに。そして不安な気持ちから、一緒にいかない?と誘ってみたり、
くんちゃんは小学校に着くと、ママから離れたくない、
ママも一緒に教室に入って欲しいと思いましたが、先生に一人で手をひかれていきます。
くんちゃんは字が書けないし、計算もできないし、
周りのお友達がスラスラと黒板に字を書く姿をみて、
どんどん体と心が小さくなっていきます。
もう逃げてしまいたい。消えてしまいたい。
そんな時、先生はくんちゃんに、くんちゃんの名前と同じ、
『く』から始まる言葉を言ってみなさいと言いました。
くんちゃんがいくつも『く』から始まる言葉を言うと、それを先生が黒板に
書いてくれました。
そしてくんちゃんに画用紙を渡すと、そこに『く』から始まるものの、
絵を描いてごらんなさいと言い、くんちゃんはたくさんの絵を描き、
先生に褒められました。
くんちゃんは嬉しくって帰ってからパパとママに絵を見せました。
大人が子供たちの初めてを、そっと見守ってくれていて、
子どもの不安な気持ち、こそばゆい気持ち、ワクワクする気持ち、
嬉しい気持ち、喜び、たくさんの心情がこの1冊に込められています。
自分の子どもだったころの記憶、そしてこれからそれを経験するであろう子どもを
想う気持ちで、読んでいて共感するとともに、そっと入学を控える親子に、
優しく寄り添ってくれる、勇気をくれる絵本です。
同時にこんな心にゆとりが持てる、小学校であって欲しいなと思う。
《著者紹介》
作:ドロシー・マリノ
1912年アメリカ、オレゴン州生まれ。カンザス大学で絵を学ぶ。卒業後、ニューヨークに出て、働きながら絵の勉強を続けた。やがて、子どもの本の挿絵を手がけ、のち、絵本もつくるようになった。こぐまのくんちゃんを主人公にしたシリーズ数冊があり、子どもたちに人気がある。日本では『くんちゃんのだいりょこう』『くんちゃんとふゆのパーティー』が紹介されている。
訳:まさきるりこ
1973年長崎県生まれ。慶応義塾大学文学部図書館学科卒業後、渡米し、シモンズ・カレッジ大学院図書館学科卒業。ニューヨーク公共図書館、アメリカン・スクール・イン・ジャパン図書館、家庭文庫研究会を経て、現在、鴨の子文庫主宰、兵庫県子ども図書館研究会代表。著書に『学校図書館と児童図書館』(共著)、訳書に『もりのなか』
『あるあさ、ぼくは…』『ストーリーテラーへの道』(共著)等多数ある。
※絵本より引用
【作:ドロシー・マリノ 訳:まさきるりこ 出版社:ペンギン社】