子どもの頃、クジラが人間と同じ哺乳類と聞いて、とても驚いた。
どこからどう見ても、魚の形をしているし、海で生きていたから。
でも子どもを産む時には、卵じゃないところや、お乳で子どもを育てること、
呼吸もエラ呼吸ではなく、水面に出て息継ぎをする点は、
確かに人間と同じ機能と言えるけれど、あまり釈然としなかった覚えがある。
このたび、クジラの進化を絵本で辿り、ようやくうなずけたように思う。
クジラの最初の先祖は、四つ足でオオカミのようなカワウソのような姿だったからだ。
海ではなく川に生息し、浅瀬でエサを捕り生きてきたパキケタス。
体中に毛が生えていて、クジラの面影はまだまだない。
クジラが哺乳類の仲間だと言われて、進化の過程で一番納得がいった姿だ。
でもどうやってこの動物をクジラの先祖だと判明したのだろう?と疑問に感じていると、
パキケタスの耳の骨がクジラと共通していた点からわかったのだとか。
それから1000万年過ぎた頃には、巨大な魚竜へ進化し、
4つ足があったなごりが体の小さな突起としてまだ残っている。
もうすでに体長は17メートルから18メートルに達し、海に生息していた。
哺乳類と爬虫類の違いは、尾ひれにも表れる。
哺乳類は縦に尾ひれを動かすのに対して、爬虫類は左右に尾ひれを動かす特徴がある。
また陸上から海にで過ごすようになり、クジラの体は大きく変化しました。
水の抵抗を少なくするために、流線形になったことや、前足は、
水をかいたり、海中で姿勢を保つための胸びれに形を変え、
水を強く蹴って進む尾びれを進化させ、現在の形の原型が出来上がりました。
クジラはエサを効率的に得るために、エコロケーションと呼ばれる能力で、
音を発し、はねかえってきた音で、獲物との距離、位置関係、大きさ、カタチまで
把握していました。
すごく賢い動物であることがわかります。
これからも地球で起こる変化は、私たち人間も、
動物も進化をさせるきっかけになるかもしれません。
生き物が生き残りをかけて、必要なものを進化させ、逆に不利なものは、
消していき、こうして長い年月をかけて今の形に進化したことが、
ダイナミックな絵と、わかりやすい言葉で、私たちの探求心をくすぐる一冊です。
今回はクジラに焦点をあてた内容ですが、他の生き物もぜひシリーズかして欲しい
絵本です(*^-^*)
《著者紹介》
文:水口博也(みなくち ひろや)
写真家・ジャーナリスト。大阪府生まれ。京都大学理学部動物学科卒業。海生哺乳類を中心に、写真集や写真絵本、ノンフィクションなどを多数手掛がける。写真集『オルカ アゲイン』で第22回講談社出版文化賞写真賞受賞。写真絵本『マッコウの歌 しろいおおきなともだち』で第5回日本絵本大賞受賞。
絵:小田隆(おだ たかし)
画家・イラストレーター。三重県生まれ。東京藝術大学美術研究家修士課程修了。専攻は油画と壁画。博物館のグラフィック展示、図鑑の復元画、絵本などさまざまな分野で活躍。京都精華大学マンガ学部教員。SVP会員、日本古生物学会会員、美術解剖学会会員、なにわホネホネ団団員。
監修:木村敏之(きむら としゆき)
群馬県立自然史博物館生物研究係長(学芸員)。愛知県生まれ。名古屋大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。専門は古脊椎動物学・鯨類学。
※絵本より引用
【文:水口博也 絵:小田隆 監修:木村敏之 出版社:講談社】