アンデルセン童話の赤いくつ。
お母さんを亡くして、ひとりぼっちになったカーレン。
靴を買うお金もなく、夏ははだし、冬は木靴をはいていた。
そんなカーレンを呼び寄せた親切なおばあさんは、
教会に行くために、
カーレンに新しいドレスを買い、新しい赤い靴を買ってあげました。
おばあさんは目が悪かったので、教会に不釣り合いなダンス用の靴だとわかりませんでした。
カーレンは赤い靴をはいて教会に行き、教会からの帰り道、
なんだかウキウキしてきて、踊り出しました。
いちど踊りだしたら、止まりません
靴が身体にくっついて離れないのです。
おばあさんはあの子を止めてと叫び、カーレンの足から赤いくつを脱がせると、
もう履かないようにと言って棚の奥へしまいました。
おばあさんが重い病気に罹って、カーレンにそばにいて欲しいときにも、
カーレンはこっそり赤い靴を取り出すと、外へ出かけ踊り出しました。
その間におばあさんは亡くなってしまいました。
おばあさんの最期に寄り添えなかった自分を責め、カーレンは自分の足を切りました。
カーレンは本当に大切なものが何かを、失ってはじめて気がつきました。
赤い靴の魅力に取りつかれ、心も体も、大切な人も失います。
とても悲しいお話なのですが、最後天使に神様のところへ導かれ、
おばあさんと一緒に光の中を歩いている姿に救われる思いがします。
途中怖いシーンもありますが、カーレンがマリオネットで表現されていることで、
おとぎばなしとして読める作品になっていると思います。
ピカピカキラキラと輝くものに、目を奪われますが、
本当にいいもの、本当に大切にすべきものは、心の目で見て、
しっかり握りしめていないと、簡単に消え去ってしまう儚いものなのかもしれません。
色々な解釈ができる作品になっており、真理を見失いやすい現代に、
ぴったりな作品だと思います☆
《著者紹介》
文:岩崎京子(いわさききょうこ)
1922年東京に生まれる。短編「サギ」で日本児童文学者協会新人賞、『鯉のいる村』(新日本出版社)で野間児童文芸賞、芸術選奨文部大臣賞、『花咲か』(偕成社)で
日本児童文学者協会賞を受賞。絵本に『ききみずきん』(ポプラ社)、『十二支のはじまり』(教育画劇)、『けいたのボタン』(にっけん教育出版社)、『七つの星』(女子パウロ会)、そのほか『お父さんの足音』(ポプラ社)など作品多数。
絵:降矢なな(ふりやなな)
1961年東京に生まれる。スロヴァキア共和国、ブラチスラヴァ美術大学・版画科卒業。
絵本に『めっきらもっきら どおん どん』『ちょろりんの すてきなセーター』(ともに福音館書店)、「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社)など。挿絵に『やまんば山のモッコたち』(福音館書店)、「こぎつねキッペ」シリーズ(ポプラ社)など。岩崎京子氏とのコンビは『けいたのボタン』に続き2冊目。
※絵本より引用
【文:岩崎京子 絵:降矢なな 出版社:女子パウロ】