★KIKOがお勧めしたい絵本の世界★

年間200冊読んで、人にお勧めしたいと思った絵本を紹介します♪

ひびけ わたしの うたごえ

f:id:kiko_book:20210322094955j:plain

ひびけわたしのうたごえ

冬の朝、カナダに住む6歳の少女はスクールバスに乗るため、長い道のりを

 

雪をかき分けながら、まだ陽が出ない真っ暗な道を、白い息を吐きながら、

 

一人で進む。

 

何度となく、その暗闇に、孤独になりながら、その不安を吹き飛ばしながら道を進んでいく。

 

春は、卒業、入学、入社、退職、新しい生活へ向かう人が多い季節。

 

期待と同じぐらい、時にはそれよりも大きな不安を胸に抱えながら、

 

私たちは新しい日を迎えようとしている。

 

人生の節目で、応援してくれるような一冊です。

 

冬の朝はまだ暗い。あたたかな家を一歩でると、冷たい風が吹きつける。

 

スクールバスまでの長い道のりを女の子は、息を切らせながら、

 

心細さを押し隠して、前へ一歩一歩、歩いていく。

 

お弁当の入ったかばんをぎゅっと握りしめて、

 

坂をくぐると、もう家は見えない。

 

真っ暗闇の森を進むと、いろんな声が聞こえてくる。

 

誰かに見られているようで、足がすくむ。

 

勇気を出して、立ち止まらず、見上げないで、ただひたすら前へ進む。

 

キーキー、ウーウー、ホーホー不思議な音があちらこちらから聞こえてくる。

 

ひとつ深呼吸をして、そうだ、歌を歌おうと、

 

女の子は不安を打ち消すかのように、大きな声で歌い出す、

 

白い息を吐きながら、すると辺りが明るくなった。

 

北風が吹き荒れ、どこまでも続く雪。

 

歌って、歌って、歌い続ける。

 

ずんずんと雪の中を進んでいくと、ようやくスクールバスが見えてきました。

 

もう大丈夫。そこにはいつものみんなの笑顔が待っていました。

 

さぁ新しい今日のはじまりです。

 

 

カナダが舞台なので、日本とはくらべものにならないぐらい、大地は広く、

 

どこまでも終わりのない雪景色は、この道で方向はあっているのか不安になる。

 

真っ暗な中で聞こえる動物の声も、昼間とは違い、不気味な声にかわり、

 

冷たい北風が余計に弱気にさせる。

 

自分の歌声で静寂をやぶり、気持ちが少しずつ解けていく。

 

人生で何度もこういった状況が繰り返される中、

 

誰かがいつもそばにいて助けてくれたらいいけれど、

 

そう、うまくもいかないもの。

 

たった一人の時も、自分を自分で励まし、強い気持ちと、

 

どんな困難にも負けず、ただひたすら前に進む、前に進んでいたら、いつの間にか、

 

困難な状況は通り過ぎていたという経験の繰り返しに思う。

 

そんな気持ちを忘れないでねというメッセージが込められている一冊。

 

《著者紹介》

文:カロライン・ウッドワード

作家・灯台守。

カナダ、ブリディッシュ・コロンビア州、ピース・リバー流域のセシル湖畔で少女時代を過ごす。その地域の子供たちは、勇敢でたくましく、彼女自身も家からスクールバスの停留所までの長くて困難な坂道をあるいて通った。現在バンクーバー島西部トフィーノ近郊、クレイオクォット湾の入口に位置するレナード島灯台に住む。

 

絵:ジュリー・モースタッド

カナダで注目されているイラストレーター。

ギャラリーで作品展を開き、アニメーション・ミュージックビデオの制作も手掛ける。

主な作品に『サディがいるよ』(福音館書店)、『スワン アンナ・パブロワのゆめ』『きょうがはじまる』(以上、BL出版)『はるなつあきふゆの詩』(偕成社)『ショッキングピンク・ショック!』(フレーベル館)などがある。スケッチを描いたり、スープ入れを制作したり、パンを焼いたりするのが好き。家族と共にカナダ・バンクーバー在住。

※絵本より引用

【作:カロライン・ウッドワード 絵:ジュリー・モースタッド 訳:むらおかみえ

 出版社:福音館書店

 

 


ひびけ わたしの うたごえ (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

にわとりとたまご *イエラ・マリ  エンゾ・マリ さく

f:id:kiko_book:20210319093551j:plain

にわとりとたまご

とてもインパクトのある表紙!ニワトリと言えば、

 

あの真っ赤なトサカを一番にイメージして、あまり普段足元に注視したことがなく、

 

この構図は私にはとても新鮮に思えました。

 

ページをめくっていくと、文章は一切なく、

 

絵でニワトリが卵を産み、それをあたため、卵の中で命が育ち、

 

やがてひよこが殻をくちばしで割って、顔を出すという一連が描かれている。

 

子どもにたまごって命なんだよ。

 

命をもらって私たちの元気な体がつくられているんだよと、伝えながら、

 

読み聞かせました。

 

たまごって、もうスーパーに売られていて、商品として見ているので、

 

たまごがひよこになって、大人になったらニワトリになるというのが、

 

とても不思議なようです。

 

足元の羽をよくよく見ると、黄色と黒の羽が混じっていて、とてもリアルに描かれています。

 

線で描いているだけなのに、卵から出てきたばかりのひよこは少し毛が濡れているように見え、

 

お母さんの足元にいるひよこは少しふくよかになって、毛並みも揃っています。

 

私も幼い頃、ずっとひよこはひよこのままでいて欲しいと思っていました。

 

どうして大人になった姿が、こんなにも違うのだろう?と。

 

子どもに命の大切さ、生きものの成長過程を見せるのに、

 

おすすめな一冊です(*^^)v

 

【作:イエラ・マリ エンゾ・マリ 出版社:ほるぷ出版

 

 

 


にわとりとたまご (海外秀作絵本)

 

 

ないしょのおともだち 

f:id:kiko_book:20210318095231j:plain

ないしょのおともだち

大きなおうちに住む女の子と、その近くに小さなおうちに住むねずみの家族の物語。

 

二人とも、家族構成が同じで、同じような暮らしをし、

 

朝になればそれぞれ学校へ行きます。

 

ある日、女の子は食事中にスプーンを落として、拾おうとしたときに、

 

小さなねずみの女の子とパタリ目が合い、お互いの存在に近づく。

 

女の子はママに、ねずみはきたないから、絶対に近づいてはダメと言い聞かされており、

 

そしてねずみの女の子も、人間は怖い存在だから近寄らないようにと言われていました。

 

なので、女の子も、ねずみの女の子も、目が合ったことを、お互いに家族には内緒に

 

していました。

 

次の日も女の子はわざとスプーンを落とし、ねずみに手をふりました。

 

ねずみもフォークをわざと落として、女の子に手をふりました。

 

やがて、お互いに大人へと成長し、親しんだ家を旅立つことになりました。

 

女の子もねずみももう会えなくなりました。

 

やがて女の子はお母さんになり、家族と一緒に大きな家に住みました。

 

ねずみもおかあさんになりました。家族と一緒にとても大きな家のすみにある、

 

小さな家に住みました。

 

やがて女の子が産んだ娘が成長し、ねずみが産んだ娘が成長し、

 

ある晩女の子がベッドから読んでいた本を落とし、ねずみの子も同じときに、

 

本を落とし、お互いの存在に気が付きました。

 

それから毎日二人は本を落として、合図し、そっと距離が近づいていき、

 

ある晩、顔を合わせて、おやすみなさいと二人で言い合いましたというお話。

 

女の子と、ねずみの女の子の家族構成が同じで、部屋のつくりも似ていて、

 

距離感のある、微笑ましい楽しい交流が続きましたが、

 

大人になってその関係が一度途切れたと思ったら、ひょんなところからまた縁が生まれ、

 

その距離が少しずつ縮まっていく、なんとも可愛らしい物語。

 

シルバニアファミリーみたいで、おうちの構図が素晴らしく、レトロでかわいい。

 

ねずみのソファーは卵のパックに布が敷いてあり、ティパックがクッションだったり、

 

ビール瓶のふたや、人間の落とし物の小物を上手に壁に飾っていたり、

 

絵の隅々まで見ていて楽しくなる絵本。

 

右のページと左のページにそれぞれの家族、家、暮らしが描かれていて、

 

シンクロする暮らしと、二人の動きを見比べたり、

 

子どももないしょのお友達関係に、夢中でくいいって見ていました(*^-^*)

 

《著者紹介》

文:ビバリー・ドノフリオ

米国コネチカット州ウェズリアン大学卒業後、コロンビア大学の創作科で芸術修士を取得。自伝的小説『サンキュー、ボーイズ』はベストセラーとなり、ドリューバリモア主演で映画化もされた。『ないしょのおともだち』は、初めての子ども向けの作品。

これまで23の家に住んだことがあり、そのほとんどの家のすみに、ねずみの家もあった。

 

絵:バーバラ・マクリントック

米国ニュージャージー生まれ。ノースダコタ州のジェイムズタウン・カレッジで学び、

19歳で絵本作家になるためニューヨークに移る。日本で刊行されている本に、『ダニエルのふしぎな絵』(ほるぷ出版)、『シモンのおとしもの』(あすなろ書房)など。

いま住んでいるコネチカット州の家は1815年に建てられ、代々ネズミが住んでいる。

※絵本より引用

【作:ビバリー・ドノフリオ 絵:バーバラ・マクリントック 訳:福本友美子

 出版社:ほるぷ出版

 


ないしょのおともだち

 

くまのコールテンくん *ドン=フリーマン

f:id:kiko_book:20210317111038j:plain

くまのコールテンくん

子どもの時に、お気に入りだった、自分の分身のような、兄弟のような存在の

 

くまのぬいぐるみがいたことを思い出す。

 

大好きで、背中におぶったり、手を握ってずるずると引きずりながら歩いた覚えがある。

 

ピンク色のくまだったのに、可愛がりすぎて、ピンクグレー色になって、

 

たまに母に洗濯してもらって、外に干されていたくまの後ろ姿が懐かしい。

 

”くまのコールテンくんは、おおきなデパートのおもちゃうりばにいました。

 

おもちゃうりばでは、どうぶつも、にんぎょうも、 みな はやく だれかがきて、

 

じぶんをうちにつれてってくれないかなぁと おもっていました。

 

おみせはいつも かいものする おきゃくで いっぱいでした。

 

でも、みどりのズボンをはいた コールテンくんを かっていこうとする

 

ひとはいませんでした。

 

ところが、あるあさ ひとりのおんなのこが コールテンくんのまえで、

 

たちどまりました。『ねぇママ!あたしずっとまえから こんなくまがほしかったの。』

 

といいました。おかあさんは、くびをふって、

 

『きょうはだめよ。それにしんぴんじゃないみたい。つりひものボタンが、ひとつ とれているわ。』

 

といいました。

 

コールテンくんは、『ぼくボタンがとれているのしらなかった。こんやさがしにいこう。』といいました。

 

そのばんおそく、おきゃくがみんな かえって おみせのとがしまってしまうと、

 

コールテンくんはそうっと たなからおりて、どこかにボタンがおちていないか、

 

ゆかのうえを あちこち しらべはじめました。 するときゅうに、あしもとのゆかが

 

うごきだしました。コールテンくんは エスカレーターのうえに 

 

あしをのせてしまったのです。

 

エスカレーターをのぼって、うえのかいにつくと、 テーブルやいす、でんきスタンド、

 

ソファー、それにいくつもベッドがずらっと ならんでいました。

 

『わぁ~おうさまのごてんだ!行ってみたかったんだ。』といきをはずませていいました。

 

コールテンくんはベッドによじのぼりました。するとそこに、

 

まるくて、ちいさなものが、おちていました。『なあんだ、ぼくの ボタン こんなところに、あった!』

 

コールテンくんは、ボタンをつまみあげようとしました。

 

ところが、ボタンはマットレスにしっかりくっついていて、はなれませんでした。

 

コールテンくんは、りょうてでボタンをつかんで、ちからいっぱいひっぱりました。

 

するとポーンとボタンはとび、コールテンくんは、はずみをくらって ひっくりかえり、

 

ゴツンとでんきスタンドにぶつかって、ガチャーンとおとを たてて ゆかにたおれました。

 

コールテンくんは知りませんでしたが、お店のなかには、ほかにも起きているひとが

 

いました。それはけいびいんのおじさん。

 

けいびいんさんは、コールテンくんを見つけておどろき、エスカレーターを降り、

 

コールテンくんをおもちゃ売り場にもどしました。

 

つぎのあさ、コールテンくんが めをさましたばかりのところへ、きのうきた、

 

おんなのこが にっこり わらいかけました。

 

『あたし、リサっていうの。あたし、あなたを つれにきたのよ。 ゆうべちょきんばこをあけて、しらべたら、ちょうど あなたがかえるだけあったの。おかあさんもいいって。』

 

そしておんなのこはむねにだいて、コールテンくんを家につれてかえりました。

 

リサのお部屋にはいったコールテンくんにぴったりの大きさのベッドもありました。

 

『あたし、あなたのこと、 このままでも すきだけど、でも ひもが ずりおちてくるのは きもちわるいでしょ。』とリサはいいました。

 

『ともだちって きっと きみのような ひとのことだね。』とコールテンくんはいいました。

 

『ぼく、ずっとともだちがほしいと おもっていたんだ。』

 

『あたしもよ!』リサはそういって、コールテンくんをぎゅっとだきしめました”

 

 

くまのコールテンくんが、夜にデパートを歩き出したり、おしゃべりできたり、

 

夢がいっぱいの絵本。そして、ボタンがとれていて、新品にみえないくまのぬいぐるみを、

 

リサはこのままでも大好きなんだけどといいながら、ボタンをつけてくれる。

 

ありのままのコールテンくんを愛してくれる、大切にしてくれる親友を見つける。

 

おもちゃを大切に思う優しい気持ち、そして一緒にお話をしたり、想像力広がるお話でした。

 

《著者紹介》

作:ドン=フリーマン

1908年、アメリカのカリフォルニア州生まれ。1978年2月没。高校卒業後、ニューヨークに出て、絵の勉強をする。劇場案内の絵やポスターを描くうちに、絵本づくりの魅力にとりつかれ、多くの絵本を残した。代表作に『くまのビーディーくん』『にんぎょうのくに』がある。

 ※絵本より引用

【作:ドン・フリーマン 訳:松岡享子 出版社:偕成社

 


くまのコールテンくん (フリーマンの絵本)

 

 

にじいろの さかな  *マーカス・フィスター

f:id:kiko_book:20210316092902j:plain

にじいろのさかな

キラキラと虹色に光る特別なうろこを持つ、にじうお。

 

他の魚にはない、このキラキラとしたうろこが自慢だった。

 

みんなが一緒にあそうぼうと誘ってくれても、

 

にじうおは返事もせず、得意気にみんなの前を素通り。

 

ある日、小さな青い魚が、にじうおにキラキラしたうろこを一枚ちょうだいと言いました。

 

にじうおはこのキラキラのうろこをあげるもんかと思い、断りました。

 

にじうおはいつの間にか、広い海で、ひとりぼっちになってしまいました。

 

誰も相手にしてくれません。

 

ある日にじうおは、自分の悩みを、ヒトデに打ち明けました。

 

こんなにも美しいうろこを持っているのに、誰も自分を好きになってくれないと。

 

ヒトデはたこのばあさんなら、解決してくれるかもと言いました。

 

そしてにじうおたこのばあさんのところへ行きました。

 

たこのばあさんは、みんなにその虹色に光る鱗を一枚ずつ、あげなさいと言いました。

 

そうすれば、お前は一番綺麗な魚ではなくなるが、何が幸せかわかるからと。

 

にじうおはさっそく、キラキラした虹色の鱗を、みんなに1枚ずつ渡すことにした。

 

みんなはとても喜んでくれ、にじうおも鱗を渡すたびに、幸せな気持ちになった。

 

周りの海中が、キラキラと光り、楽しくなった。

 

そしてたくさんの友達を手に入れましたというお話です。

 

大人の私が読むと少しモヤモヤとする部分が正直あります。

 

自分の得意なことを自慢をするのはよくないけれど、みんなに大切なものを

 

あげないと本当の友達になれないのかな?というモヤモヤ。

 

そこを、子供にはき違えてもらいたくない点。

 

うろこがキラキラしていたから、よけいにモノのように感じてしまったのかも。

 

ただ、どんな喜びを得ても、得意なものがあっても、周りにそれを話せる友達、

 

分かち合える友達がいて初めて、その喜びや幸せが2倍、3倍にもなるということを、

 

子どもには伝えました。

 

そして、にじうおは自分の体にうろこがあるうちは、

 

そのキラキラと海の中できらめく、美しい世界を、自分の視界におさめることができなかったけど、

 

みんなに分けたことによって、そのうろこの美しさを、美しい世界を、

 

見えるカタチで手に入れたことにもなる。(新たなしあわせをカタチに)

 

子どもには目に見えるもの、見えないもの限らず、与えられる人間に育って欲しいなと

 

いう願いから読み聞かせしました(*^^)v

 

《著者紹介》

作:マーカス・フィスター

1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ・アメリカ・メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。おもな作品に〈ペンギンピート〉シリーズ、〈うさぎのホッパー〉シリーズ、〈にじいろのさかな〉シリーズなどがある。1993年、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞した『にじいろのさかな』を

はじめとする〈にじいろのさかな〉シリーズは、世界で3000万人の読者に迎えられた大ベストセラーとなっている。

※絵本より引用

【作・絵:マーカス・フィスター 訳:谷川俊太郎 出版社:講談社

 


にじいろのさかな (世界の絵本)

 

 

 

きりの なかの サーカス *ブルーノ・ムナーリ

f:id:kiko_book:20210315102213j:plain

きりのなかのサーカス

この絵本『きりの なかの サーカス』は、最大の特色は、『霧』を表現するのに、

 

トレーシングペーパーを使用していること。作者のムナーリは子どもに、

 

『霧』がどんなものかわからせるには、どんな言葉を費やしてもあまり効果がなく、

 

『霧』の感じがする素材に絵をのせれば、ずっと簡単に表現できると考えたそうです。

 

霧がかかるだけで、日常の世界が、急に不思議な、見知らむ神秘的な世界に見えて、

 

先がわからない、見えなさに、心細くなる気持ちと、

 

いつもと違った世界に迷い込んだようなドキドキ感が絵本からも伝わってくる。

 

トレーシングペーパーは全てはっきりと透けてるわけではなく、

 

なんとなくぼんやりと次のページを漂わせ、まるで霧の中を歩いているみたいな気持ちになる。

 

霧を抜けると、絵本の中心ページは鮮やかなサーカスで彩られ、

 

これまた現実離れしたような、別世界が登場する。

 

絵本はカラフルな画用紙が何ページにも渡り、穴が開いていて、しかけいっぱいに、

 

サーカスを表現している。

 

とこどころに散りばめられた短い言葉は、

 

谷川俊太郎さんの詩で綴られ、この不思議な世界を彩る素敵なスパイスになっている。

 

そして鮮やかなサーカスの世界を抜けると、また濃い霧の中を抜け、

 

家に帰る(現実に戻る)というお話。

 

サーカスの前後に霧の時間(モノクロページ)があることによって、

 

よりサーカスが浮世離れしたような色鮮やかな世界(特別な時間)に見える。

 

子どもは透けるトレーシングペーパーと、初めての手触りに感動していました。

 

視覚的にも、触感的にも、初めて出会った絵本だったよう。

 

五感を刺激してくれる作品です。

 

【作:ブルーノ・ムナーリ 訳:谷川俊太郎 出版社:フレーベル館

 

 


きりのなかのサーカス

わたしのおふね マギーB *アイリーン・ハース

f:id:kiko_book:20210312092039j:plain

わたしのおふね マギーB

マーガレットという少女がある夜お星さまにお願いしました。

 

自分の名前をつけた船に乗って、海を渡り、

 

船の中で誰か仲よしの人と一緒に暮らしたいのと。

 

そのまま眠りにつくと、目覚めた時、本当に船の上にいました。

 

願いが叶ったのです。夢のようです。

 

一緒に船の上に乗っていたのは弟のジェームス。

 

デッキの上ではおんどりが鳴きながら、歩いていて、

 

デッキの一番上には小さな畑もありました。

 

ヤギやヒヨコ、リンゴ、ももやオレンジの木まで何でもあります。

 

さっそく朝ごはんにオレンジを一つもぎとりました。

 

マーガレットは嬉しくて、おおはりきりで、船の上を掃除したり、

 

昼ご飯の支度をしたり、弟の世話に、大いそがしです。

 

お昼はお天気が良かったので、デッキの上でお弁当を持って、

 

ピクニックをしました。

 

夕飯は何にしようか?と考えていたら、良いことを思いつき、

 

バスケットにおいしいものをいっぱい収穫して、

 

海に網を下ろして、えびやきんいろのスズキをとり、

 

ちいさなストーブの上のおなべに、たくさんのやさい、魚介をいれて、

 

ぐつぐつとゆっくり煮込みました。

 

今晩はうみのシチューです。

 

やがてあたりは暗くなってきて、風も出て来ました。嵐の予感です。

 

ほを下ろして、船室に戻ると、オーブンでマフィンを焼き、

 

桃を切って、シナモンをふりかけ、一緒にオーブンにいれました。

 

あたたかいヤギのミルクで体もポカポカです。

 

夕ご飯のあとは、マーガレットがバイオリンを奏で、

 

ジェームスをゆりかごに寝かせました。

 

マーガレットもふかふかのベッドに入り、長い一日が終わりましたというお話です。

 

 

小さな子どもが、船で大冒険をするお話。

 

船室には畑もあり、陸上の動物も何匹か連れて、果物の木や、草花が生い茂り、

 

まるで小さな海の上の島に住んでいるよう。

 

絵本の中で出てくる食事やおやつがとても美味しそうで、

 

読んでいてわくわく、幸せな気持ちになる。

 

途中嵐がきても、小さな女の子が一人で、船を守ろうと、

 

おとうとを守ろうと奮闘する姿も勇気を与えてくれる。

 

夢がこれでもかっというぐらい詰まっている。

 

絵本の中もモノクロページと、極彩色のページを使い分け、

 

読者の五感を引き出すような演出がされていて、興味深い。

 

例えば船室で食事をつくっているページはモノクロのページになっていて、

 

料理を想像し、おいしい香りだったり、料理の味だったりを、

 

自由に読む側が想像して楽しむことができる。

 

《著者紹介》

作:アイリーン・ハース

アメリカ在住のデザイナー、イラストレーター。ニューヨーク市生まれのニューヨーク育ち。劇場の舞台、陶器、壁紙、生地、レコードジャケットなど、

さまざまなジャンルの仕事に才能を発揮する。雑誌や広告に描いたイラストレーションが編集者の目にとまり、すすめられて絵本の制作をするようになった。

1975年刊の本書は、初めて彼女自身が物語を書いた、アメリカでも評判の高い絵本である。絵本に『ベスとベラ』『つきあかりのにわで サマータイムソング』(ともに福音館書店)などがある。

※絵本より引用

【作・絵:アイリーン・ハース 訳:内田莉莎子 出版社:福音館書店

 


わたしのおふねマギーB (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)