一人称童話シリーズの桃太郎編。
普段、三人称で語られるスタイルが多いですが、
この絵本は桃太郎の視点から、桃太郎という物語が語られていきます。
よく知られている桃太郎の話は、大きな桃から生まれて、とても勇敢に鬼に立ち向かう、
心が強くて優しい、勇気あるヒーローのような桃太郎。
それはあくまで外から見た桃太郎。
この絵本に描かれる桃太郎は決して強いわけではありません。
鬼だって本当は怖いし、ぶるぶると震えながら戦う桃太郎が描かれています。
桃太郎が特別な人間だったわけではなく、ヒーローだったわけでも、
人より強かったわけではない。桃太郎に共感するとともに、親近感がわきました。
本の最後には君がもし桃太郎だったら、どんな気持ちかな?
桃から生まれた時はどんな風だったのかな?
いつもの村をたびだつときは、どんな気持ち?
怖い鬼と向き合ったときは?
君ならどんな桃太郎になる?
と問いかけられます。他にもサルだったらどんな気持ちかな?
キジはどんな気持ちで仲間になったのかな?
鬼退治に送り出したおじいさんとおばあさんはどんな気持ちだったのかな?
桃太郎がいない間おじいさんとおばあさんは、どんな風に過ごしたのかな?
と桃太郎だけでなく、他の登場人物の気持ちも想像してみようとあります。
相手の気持ちを考えたり、物事を俯瞰してみる力や、
そして相手の立場に立って考える力は、生きていく上でとても大切なスキルです。
これからコミュニケーションも大人になるにつれ、複雑になっていきます。
相手の気持ちになって考えてみるという視点を与えてくれる一冊です。
絵本の絵も桃太郎から見た、お供の仲間だったり、鬼だったり、
おじいさんとおばあさんの表情が描かれているのが、
まるで自分が主人公である桃太郎になったような感覚で読み進めることができます。
絵も文章も、ありそうでなかった面白い視点で描かれています(*^^)v
《著者紹介》
絵:岡村優太(おかむらゆうた)
1988年大阪市生まれ。面相筆と墨汁を用いた線画で、精密画からキャラクターまで幅広くイラストレーションを手がける。
※絵本より引用
【絵:岡村優太 文:クゲユウジ 出版社:高陵社書店】